《富士山》

晩秋の富士山を巡る旅に出掛けましょう。11月初旬、ちょうど紅葉が終わろうとしているとき、富士山の上の方では雪が積もり始めている頃合いです。
ここは田貫湖の湖畔。夕陽に焼ける富士山と湖面に映る逆さ富士を見ることが出来る場所。太陽が沈んでも尚、富士山の上の方はまだ陽の中。標高が高い分、日没のタイミングに時間差があるようです。麓から影が徐々に山頂へ向かって昇り始め、やがて富士山にも夜が訪れます。ほぼ東に見える富士山の背後から、星々が見え始めてきました。
この時期は、富士山五合目まで車で登ることが出来る最後のチャンス。数日後には、スカイラインは完全に閉鎖され、その道は来春まで雪に閉ざされます。五合目は標高2500メートル、だいぶ空に近い感じがします。眼下には富士山麓の街の夜景が広がり、見上げると満天の星が輝いています。ここからなら、見ることが出来ると長生きできるという伝説の星「カノープス」も見ることができそうな予感。
「富士山が見える星の風景」と「富士山からの星の風景」どちらも甲乙付けがたい選択です・・・さぁ旅に出掛けましょう!

VR映像仕様

映像解像度 映像タイプ 音声 時間 ライセンス
4K 8K 12K 16K 2D 3D 2ch 7:00 
     


富士山と湖



山梨から富士山を見る

山梨県の富士山麓には5つの湖がある。山中湖・河口湖・西湖・精進湖・本栖湖を総称して富士五湖と呼ばれ、世界文化遺産にも登録されている。 どの湖畔からも富士山を見ることができ、それぞれに違った雰囲気を見せてくれる。湖面が波立っていない穏やかな日には、逆さ富士も見られることもある。 その中でも本栖湖からの富士山は、千円札にも描かれていることでも有名である。この構図と同じ位置は、果たしてどこにあるのだろうか? 本栖湖の湖沿いの道路からも富士山はよく見えるが、あの構図と同じ場所は、実はもっと上の方にある。 綺麗な公衆トイレがあり、その近くから上の方に向かっている登山道を見つけることが出来る。 30分くらい頑張って登ると、中ノ倉峠展望地に到着する。その先に見えるのは、千円札。是非、財布の中に千円札あることを確かめてから、登り出すことをオススメする。
精進湖からの富士山もバランスが良い。額縁に飾られた絵のような姿である。精進湖の左右には囲うように尾根が降りてきて、湖の真正面には青木ヶ原樹海が、その奥には大室山が、そしてその奥に富士山が一直線に繋がっている。
富士山の絶景ポイントをもうひとつ。山中湖を臨むこの山の上の場所もたいへん良い。ここは、鉄砲木ノ頭(明神山)。神奈川・静岡・山梨の県境が集まる三国山の隣の山である。 県道730の三国峠からトレッキングコースが整備されている。地図で見る限りそれほど遠くなく、楽に頂上まで行けそうな感じがするのだが、実際に昇り始めてみると、これがなかなかに急である。 現在進行形で雨水が山肌を削り取り続けていることが良くわかる溝が続き、歩きにくい。溝に気を取られて、あんまり下を見続けて歩くと軽く遭難しそうな気配すらある。 多少は大げさに書いているが、ある程度は辛い思いをして15分程度登れば、頂上である。頂上には、諏訪神社の奥の宮が鎮座している。わりと立派な社と石碑だ。 そしてその社の向かう先には、富士山が鎮座している。なかなかの迫力である。右下には山中湖。標高が1300メートル近くある場所なので、まわりの風景は見下ろすような感じで見えている。 富士山の方角は、ほぼ真西。タイミングと運が良ければ、ダイヤモンド富士やパール富士が狙えそうなポジションでもある。陽が沈み暗くなってくると、山中湖周辺の道路を走る車のライトや別荘地の灯がともり、慎ましやかな夜景も見えてくる。



冬の富士山五合目



静岡から富士山を見る

まずは朝霧高原である。ちょうど富士山の西側に立って見る感じになる。国道139号沿いにススキ野原があり、富士山との相性がとてもよい。 そして振り返ると毛無山がある。ここも登れば富士山を見る絶景ポイントがあるらしいが、割とガチ登山要素が多めなので、登ったことはない。
さらに国道139号を南下してゆくと、田貫湖への看板が出てくる。この田貫湖も、逆さ富士がみられる場所として有名である。 見通しもとても良く、富士山の裾野が徐々に傾斜を緩めながら左右に広がっていゆく様はとても美しい。 そして日没の時、最後まで夕陽に照らされ続けた山が、麓から山頂へ向かってゆく影で徐々に暗くなり、夜が迫ってくることが感じ取れる。 ほどなくして星が富士山の後ろから姿を見せてくる。
富士山麓を横断するように走っている富士山スカイラインが県道180号である。そして五合目まで向かって走るスカイラインが県道152号。 この県道152号の富士山スカイラインは、冬期閉鎖と夏期の登山繁忙期を除けば、24時間無料で通行が可能である。車の力を借りて標高2500メートルの五合目まで一気に登れてしまう。 冬期閉鎖間際である11月初旬の五合目の夜は、すでに氷点下になっていることも多い。それでもここから先、上へ向かっていく人は多くはないが必ずいる。本格的な冬山登山に向けてトレーニングする登山家とかもいるのだろう。
五合目からは駿河湾沿いに広がる都市の夜景がよく見える。標高が高いので、飛行機から見下ろしている感覚に近い。その夜景の上に、星空が広がっている。 正面に見えているのが太平洋、真南の方角になる。かなり低高度の星までよく見える。ここからなら、間違いなくカノープスを見つけることができそうだ。この星には、見ることが出来れば長寿になるという中国の伝説がある。低高度でなかなか見ることが難しかったのは今も昔の同じ事。 しかしながら、このカノープスという星は、シリウスに次いで二番目に明るく輝く星であり、この明るさが地球外の遙か彼方でも利用されていることをご存じだろうか。 現在、太陽圏を離れ、遙か深宇宙を目指して飛行を続ける惑星探査機ボイジャーが、自分自身の道しるべとしてカノープスを指標にしているのだ。 カノープスと太陽の光をそれぞれ検知し、光の来る方角から地球の方向を割り出しアンテナを向け、今でも地球に向けて信号を送り続けている。 そんな明るい星ですら、ここからでは大気の影響で赤暗い星にしか見ることが出来ない。沖縄の八重山諸島あたりまでゆくと、だいぶ高度が上がり、本当に明るい恒星であることが分かってくる。
振り返ると富士山頂が斜め上に見える。そのすぐ上に北極星があるから、そちらが北の方角であることが分かる。なんか頑張ってまっすぐ昇り始めれば小一時間で登頂できそうな錯覚に見舞われそうになるが、それはあまりに無謀な妄想である。 じっと見上げていると、時折、山頂付近でランダムに光っているものが見える。あれは登山家のヘッドライトか何かだろうか。 雪がもう8合目あたりまで積もりだしているのが星上がりの下でも辛うじて分かる・・・この絶景を見られるのもあと僅か。 スカイラインの冬期閉鎖が数日後に迫ってきている。そして富士山は長く厳しい雪の世界に閉ざされるのである。