旅と星空

ふと見上げた夜空が満天の星に覆われていたら、それは素晴らしいことに違いありません。「星を見る」という強い目的が無い限り、それは大抵の人にとって偶然の産物でしょう。 なにしろ、満天の星を見るためにはいくつもの条件をクリアしていなければならないからです。
まずは、都会や市街地から充分に離れていて空が暗いこと。NASAの人工衛星が写した夜間写真を見ていると、日本はその輪郭がはっきりと分かるくらいに明るいことに気付いてしまいます。 至る所に人が住んでいて光に覆われています。明らかに暗そうな所は、山間部くらいしか無いのではないでしょうか。二つ目に、月が出ていないこと。どんなに街から離れた場所に行ったとしても、月が煌々と輝いていては暗い星の光は負けてしまいます。 ただ半月より細いときの月なら、しばらく待っていれば西の空に沈むから、まだチャンスはあります。三つ目に、天気。さすがに曇っていては何も見えません。こればかりは実際にどう転ぶかは分からないから、まさにギャンブルです。 これら三つの条件をクリアして初めて満天の星に出会えるのです。

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ここは山間の温泉宿。谷間を流れる川のすぐ両脇に山が迫り、両側を山で挟まれた狭い土地にある。 山がすぐそこまで迫っているから、日没の時間よりだいぶ前に、太陽が山の陰に入り一足先に日の入りを迎えたような雰囲気なる。 とは言っても、夏なのでなかなか暗くなることはない。数時間が経って、ひぐらしが啼きはじめ空が茜色に染まりだす。 やがて夜になり、近くの道を通る車もほとんど無くなった。テレビを消せば、とてつもない静寂に包まれていることに気付く。 宿の部屋は離れ個室になっていて、食事にも温泉に行くにしても外に出なければならない。 温泉にでも入りにゆこうかと、部屋の玄関を出た。ふと視界に入った夜空には、夏の天の川が山から山へ橋を渡している。こんなにも天の川がはっきりと見えるものだったのか、と・・・。 もう少しよく見える所を探そうと、河原の方へ行って見た。川下のほうは、ちょうど山がV字に見開けていて見通しが良い。天の川のいちばん濃ゆい部分がちょうど西のほうへ傾きつつあるところだった。 近くに神社もあるのでスマホのライトを頼りに行ってみると、古びた石造りの鳥居の上に夏の大三角が輝いている。これは、良いものが見れたものだ。・・・明日はちゃんとカメラを準備して来ようと決めたが、翌日は見事に曇った。 それ以来、あの星空を越える星空は見たことはないような気がする。

星空とVR

VRの映像表現と星空は非常に相性が良い。上半分は星空を、下半分は地上の風景を投影すれば、360度の全方位に渡って余すこと無く仮想空間を使えるからです。
実際に星空を見ている時を想像してみてください。 よほど星や天文に詳しくない限り、たいていの人は特にどこかを注視し続けることはなく、思いのままに色んな方向を見回しているでしょう。 真上を見たり、右を見たり、後ろを見たりと・・・いろいろ見回している間に、運良く流れ星が流れるかもしれません。 この、漠然とした視点の自由度が、VRが作り出す仮想映像空間と相性が良いのです。 星空は、基本的に満遍なく広がっているので、どの方向を見ていても良いし、天の川やいくつかの知っているカタチ(夏の大三角とか北斗七星とかオリオン座とか・・・)があれば、 それらを頭の中でトレースして行くのも良いと思います。 さらに3DのVRであれば、手前の風景と無限遠に広がる星空を「奥行きを持った空間」として体験することが出来ます。
むかしに行ったことのある場所、いつかは行って見たい場所、どこにあるのか興味をそそる場所・・・さまざまな風景の上で輝く星空をVRで予習して、次はその場所に足を運び、その土地ならではの風土と共に星空を見上げてみては如何でしょうか?



月夜の富士山

静岡県沼津市

達磨山山頂から見る富士山はとても美しい。達磨山は伊豆半島にある山で富士山からの程よい距離感が、絶景パノラマを見せてくれます。
西に陽が沈み、東から昇る満月。暗くなると、駿河湾沿いに広がる街に灯がともり始めます。いよいよ暗くなってくると、雪を積もらせた富士山が、満月の光を反射し、その姿が浮かび上がってきます。



霊界への入口

青森県佐井村

この場所は長いこと広く知れ渡ることがありませんでした。船でしか近づくことができなかった奇妙な場所。切り立った白緑色の岸壁が雨・風・波の浸食に曝され、長い年月を掛けてこの風景を創り出しました。
「神のわざ 鬼の手つくり仏宇陀 人の世ならぬ処なりけり」とかつての文人はそのように詠み残しています。



霜降の蝦夷富士

北海道京極町

羊蹄山は蝦夷富士とも称される美しいシルエットを有する山。北海道の冬は早くに訪れ、氷点下に下がった冷たい空気が夜露を凍らせ、一面の牧草地を白緑色に変えてゆきます。
流れる雲の合間から見え隠れする星空も、秋の星座から冬の星座に移り変わります。